日本石油輸送75年の軌跡
「さらなる発展へ」

8.CSR経営の推進とグループ力の強化  〔2005年~2011年〕

2000年代に入って、環境問題や人権に対する関心の高まりや、相次ぐ企業の不祥事から企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)とそのあり方が厳しく問われるようになります。
当社では、コンプライアンス・安全・環境保全・品質管理の4テーマをCSR推進の重要課題として位置づけ、2003年には「日本石油輸送(JOT)グループ倫理憲章」「同倫理行動基準」を制定して、意識の定着を図りました。
さらに2005年4月、JOTグループ全体での取り組みをより強力に推し進めるために、社長直属の組織として、CSR活動の企画、調整、チェックを行うCSR推進室を設置し、同時にグループベースでのCSR活動を推進するためにグループCSR委員会を設置しました。これを機に、従来から取り組んできた4テーマに、人間尊重と社会貢献を加えた6テーマでの活動を展開し、現在のESG活動に発展しています。

2005年の京都議定書の発効を一つの契機として、二酸化炭素(CO2)削減を軸とする環境負荷低減・環境保全への取り組みが、世界規模で急速に広がりました。当社では2002年にISO14001の認証を取得し、モーダルシフトの推進を取り組みの主軸として地道な活動を展開しています。

2000年代以降、LNGの普及が全国で進んできたことから、当社はJOTグループ一体での輸送体制を構築することで、LNG輸送事業のいっそうの発展が期待できると判断し、鉄道とタンクローリーの両方を提案・実施できる体制を整備しました。2008年4月、これまで化成品部が担当してきた高圧ガス輸送事業を主管する部署としてLNG部を新設し、LNG輸送事業を当社グループの第4の事業とする体制の構築を目指しました。

当社は2010年、新規事業開発プロジェクトをスタートさせました。同プロジェクトは、1年間の活動を経て水素輸送・レンタル倉庫事業・太陽光発電の3つを取り組むべき事業と決定し、2011年に設置された事業開発室が具現化させていくことになります。この3事業は現在の高圧ガス輸送事業、資産運用事業の中核となっています。

当社では、1984年のISOタンクコンテナ導入以来、輸送サービス業務は国内輸送に特化して発展していましたが、化成品産業の海外への生産拠点の移転等、グローバル化という事業環境の変化の中で持続的な事業拡大には海外市場を視野に入れた事業展開を推進する必要性が社内で共有され、ISOタンクコンテナによる国際輸送事業の開始に向け、検討に着手します。
2011年に化成品部において「海外展開に関する調査」を実施し、2013年度には国際輸送事業への進出の検討を行うとの計画指針が提示され、本格的な取り組みが開始されることになります。そして2013年に、ISO タンクコンテナリースの海外展開および国際輸送業務の実務に対応するための組織として、海外事業室を新設し、石油・化成品・コンテナ・LNGに次ぐ第5の事業として確立していくことになります。

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、石油タンク車による緊急石油輸送に協力しました。この輸送は横浜から被災地域まで、日本海側を経由する1,000㎞を超える前例のないものとなりました。2012年9月の輸送終了までに109万KLを無事に送り届け、一日も早い復興に向けて尽力しました。

9.新領域への挑戦  〔2012年~2017年〕

2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を機に、日本のエネルギー環境は転換期を迎えました。エネルギーの安全性という大原則が再認識され、太陽光や風力等再生可能エネルギーの普及が進むとともに、国内の原子力発電所の全面停止によって火力発電所の稼働が高まったこともあり、LNGの需要は拡大し、日本は世界最大のLNG輸入国となりました。
国内には多くのLNG輸入基地が相次いで建設されました。これらの基地から需要地への輸送は、従来は鉄道が主でしたが、タンクローリーの大型化によって自動車輸送のコストが低下したことから、鉄道からタンクローリーへの切り替えが進みました。JOT グループのタンクローリー輸送の中核を担うエネックスでは、LNG 基地からの新規輸送案件の取り込みをねらって体制を強化するため、各地に拠点を相次いで新設させました。これにより、北海道・北東北・北関東・阪神・九州の各地区で配送エリアが拡大しました。

2012年、当社とエネックスは、JX 日鉱日石エネルギー(現・ENEOS)の圧縮水素トレーラーの実証実験輸送を開始しました。翌年には実証実験の第2弾として、より高性能で大型化した、国内最大級の水素積載能力(燃料電池自動車50台分以上)を持つ2号車の受託運行を開始しています。
さらに、2015年に同社は移動式水素ステーションによる水素販売を開始しました。移動式水素ステーションは、圧縮水素を充填したトラックと、発電機とコンプレッサーを積んだトラックの2台が決められた販売地点を巡回し、FCV への圧縮水素充填を行う販売方法で、当社は、神奈川県内3 カ所の充填場所への配送に加え、販売業務までを一貫して受託しました。

10.未来のエネルギー輸送事業へ  〔2018年~〕

2021年3月、当社は設立75周年を迎えることができました。
戦後の混乱のなかで、石油という公共性の高い製品の輸送を担う物流企業としてスタートした当社は、輸送品目を石油から化成品、高圧ガス、生活必需品へと拡大させ、さらには水素等クリーンエネルギーへと広げ、着実にJOTグループとしての事業基盤を強化するとともに、一丸となって安全かつ安定した高品質な輸送サービスの提供に努めてまいりました。

当社は、75年間の経験や強みを生かして、クリーンエネルギーをクリーンに輸送する「クリーンロジスティクス」を通じて、今までにはない新たな形でお客様に貢献していきたいと考えています。
次なる時代にも「選ばれるJOTグループ」として、強い収益基盤と安定した財務体質をもつ「国内No.1 のエネルギー輸送会社の実現」をめざす挑戦は続きます。

日本石油輸送75年史資料ダウンロード

01_表紙・口絵・刊行のごあいさつ
02_目次・凡例
03_序章:前史・共同企業株式会社の歩み
04_第1章:新たな石油輸送の草創期
05_第2章:石油輸送の発展と事業多角化への萌芽
06_第3章:経営基盤強化と輸送事業の多角化
07_第4章:環境の激変と成田空港向けジェット燃料輸送
08_第5章:多角化の深化と「第2創業期宣言」
09_第6章:「第3創業期」の事業展開
10_第7章:CSR経営の推進とグループ力の強化
11_第8章:新たな領域への挑戦
12_第9章:未来のエネルギー輸送へ向けて
13_付編
14_資料編
15_年表
16_索引
17_編集後記・参考文献・奥付