日本石油輸送75年の軌跡
「安定〜挑戦」

6.事業多角化の深化  〔1981年~1992年〕

1980年代前半の日本は、国際競争力を高めた製造業の積極的な輸出に支えられて世界最大の貿易黒字国となります。しかし、この当時の当社は、国鉄の合理化に伴う貨物輸送区間の削減と、タンク車輸送量の約20%を占める事業となっていた成田輸送の終了による減収という試練を乗り越えるため、様々な取り組みを行っていきます。

貨物輸送区間の削減によって石油タンク車を使えなくなる輸送は当社全輸送量の約10%におよび、このような区間の輸送への対応として、日本石油輸送グループのタンクローリー輸送への切り替えを推し進めます。1980年代前半当時、当社の自動車輸送を担うグループ会社は、北海道・秋田・関東・中京・阪神の各地域をカバーしていました。これに加え、宮城県・岩手県の配送エリアを拡大させました。このような積極策により、石油タンク車輸送が不可能となったもののうち約30%を、当社グループのタンクローリー輸送への転換に成功します。

化成品部では、1982年に生鮮食料品用の冷蔵コンテナのリースをすでに開始していましたが、コンテナ輸送を当社事業の第3の事業に育成するべく、1984年3月、化成品部から分離する形でコンテナ部を新設しました。

ニーズを調査した結果、生鮮食料品の輸送量は季節によって波動があり、輸送量が少ない時期もコンテナを借り続けるリース方式は顧客にとって負担となることが判明したため、冷蔵コンテナでは「自由に借りられて、使用後はそのまま到着駅に返却することができる」レンタル方式を採用しました。レンタル営業は1985年から、全国11の主要貨物駅間で始まり、翌年には全取扱駅での運用を開始しました。

1984年、当社は初めてLNG(液化天然ガス)のタンクローリー輸送事業に参入しました。輸送区間は新潟東港から山形県余目町まで、距離にして160kmを東北石油輸送のタンクローリーで輸送しました。今日、当社第4 の事業として大きく成長したLNG 輸送事業はこうして始まりました。

当社は以前から物流の国際化に注目し、外航船輸送に使用されるタンクコンテナの構造やメンテナンス等、技術的な研究とともに市場や関連法規の調査・分析を進めていました。そして1984年、化成品用のISO タンクコンテナ(当時は海上タンクコンテナと呼称)のリースを開始しました。その後、本格的にISO タンクコンテナのリース事業は拡大していきます。
1986年には、コンテナリースに付加価値を加えた、輸送サービス業務を開始しました。この業務は、当社が荷主の委託を受けて、鉄道・船舶・自動車等の異なる輸送モードをすべて掌握したうえで、輸送オーダー、運行管理、請求事務等の諸手続きを一括して受託し、荷主に低コストのコンテナ輸送サービスを提供するもので、現在の化成品輸送事業の基礎を築きました。

7.JOTグループとして  〔1993年~2004年〕

1996年に当社は設立50周年を迎えましたが、ちょうどそのころ、石油業界が大きな変革期に入ろうとしていました。
1995年に石油備蓄法、揮発油販売業法の改正とともに特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)が廃止されました。このことで石油精製事業者に限定されていた石油製品の輸入・販売事業は自由競争にさらされることになりました。このような事業環境の変化を前に、石油業界では市場競争力の強化を図って、元売各社の業務提携・統合等の合理化、コスト削減が至上命題となり、タンクローリーの大型化、不採算油槽所の統廃合、施設・輸送機関の共同利用等が進められていきます。

石油業界のこうした動向は、日本石油輸送グループのあり方そのものに大きな決断を迫るものでした。石油元売各社の新たな物流政策に柔軟かつ迅速に対応するため、1998年、札幌石油輸送・東北石油輸送・関東石油輸送・関西石油輸送の4社を合併し、全国規模の新会社を設立しました。グループ各社を一体化して強靭な企業へと再編成し、機動的で効率的な営業体制とローコスト体質を構築することを目指したのです。それは、JOTグループが、元売各社にとって最良のパートナーとしてさらなる物流効率化を提案できる体制となり、単に規模の拡大だけでなく、より質の高い企業グループとなるための選択でした。

当社グループのLNG輸送は1984年の東北石油輸送(現・エネックス)によるタンクローリー輸送を皮切りに、京浜地区の輸送を担当する等、徐々にその取扱実績を積んでいました。そうした中で、2000年に日本初となるタンクコンテナによるLNG 鉄道輸送を、新潟貨物ターミナル駅-金沢貨物ターミナル駅間でスタートさせました。
輸送距離が長いため、当社では鉄道と自動車を組み合わせた輸送を行うべく、鉄道輸送可能なLNG用タンクコンテナをメーカーと共同開発し、鉄道輸送でのハードルを荷主・タンクメーカー・JR貨物と共に乗り越え、実現に至りました。鉄道輸送の実現は、タンクローリーの乗員不足という課題と、定時かつ安全な運行の実現とタンクローリー配送圏外へのLNG 供給体制の構築という諸課題の解決に先鞭をつけるものでした。